コラム05
アイディアとビジネスの違い

「LEDを使った蛍光灯の代わりの照明を新たに作ろう!!」 「地元企業がLED照明を新開発!!価格1本2万円」。 最近よく聞く話であり、新聞・テレビなどでよく取り上げられる記事である。一見、話題性はあるが、「利益を産み出すビジネス」として捉えると「?」が残る。アイディア自体は特に珍しいものではない。LEDは光るものなので、それを使って蛍光灯の代わりの照明を作ることなど、ある程度誰でも思いつく。また、技術面でも単に光らせるだけであればそれほど難しくは無い。もう一つ、非常に大事な捉え方として「蛍光灯市場へどんな作戦をもって参入するのか?」という最大の疑問が残る。照明器具の中でも最も数が多いであろう「蛍光灯市場」は、どういった企業規模の土俵なのか? 考えれば一目瞭然である。
結論を述べると、この類の新商品開発は「アイディアレベル」であり、「ビジネス」としての洗練度、可能性を備えていないといえる。そもそも、蛍光灯市場というのは、大手電機メーカーの主力市場であり、LEDという素子自体、数が勝負(数を使うことでコストが下がる)のデバイスである。当然たくさん作れば安くなるので、たくさん使う大企業が価格競争力を備えるのは言うまでも無い。このような市場に「なぜ中小企業またはその延長線の企業が参入するのか」 新商品開発で利益を上げるという観点からみれば全く理解できない。そして、その記事や内容に感心している企業や個人もビジネスの洗練度という視点でみればレベルが低い。要は、思いつき(アイディア)レベルの商品開発なのである。
では、このような「アイディア」を「ビジネスレベル」までもっていくにはどのような視点が必要か。様々な作戦が考えられるが、例えば、LEDの調光機能を活かして、色調整をつける機能を備え、メインの家庭向けではなく、特殊業務向けに仕様を特化するなど、LEDの特長を活かした機能アップと、ターゲット市場を大手が参入して来にくいよりニッチな市場へ移す。そして、使用する人にとって、「役立ち度の高い商品」に仕上げる、といった作戦が考えられる。このぐらいの作戦を立てて、初めて土俵に載るかどうか、といった感じである。要は、戦う土俵を良く考えて、ターゲット市場の人たちにとって、「困っていることを解決してくれるもの」「かゆいところに手が届くもの」を十分吟味し開発すべきである。単なる家庭用蛍光灯の置き換え商品では、全く勝負にならない。
「アイディア」と「ビジネス」の違い。一見近いように思えるが全く違うものである。アイディアは悪くないがそれをビジネスに持ち上げるのはもっと難しい。商品開発する人、それら評価する人、そして我々のように指導する人。この2つの違いをしっかりと認識し、効率の良い開発投資を行っていくべきである。「ビジネス」として洗練された新商品の登場を是非楽しみに待ちたい。
コラム04
「利益率改善」は「質」の改善から

利益率を改善するには、原価を下げる方法と売価を上げる方法が考えられます。原価を下げる方法は様々な手法が語られていますが、売価を上げる方法というのは意外と少ないようです。勿論、売価をあげるなどということは簡単にはいかないのは承知していますが、せめて他社より安価で販売しなければならない状態は避けたいものです。
意外と少ない、「質」の議論。世の中が平均的な考え方になってきているからこそ、「質」の高いモノ・サービスが差別化され付加価値を産むのです。昨今のビジネス界においては(特に地方においては)、商品・サービスの「質」が語られることはほとんど皆無です。これは、東京や大阪などの大都市圏に比べて圧倒的に情報量が不足していることにより、より高い「質」に接する機会が少ないことが要因として挙げられるでしょう。もう一つ考えられるのは、「質」が定性的であるため、その実態が捉えにくいことでそこに触れるのを敬遠してしまう、あるいは、自社の商品・サービスの「質」が高いか低いかさえわからない(議論されない)状態となっているからしょうか。
日本を代表する優良企業のみならず、最近耳にする優良企業(特に利益率の高い企業)は、漏れなく、その商品・サービスの「質」が高いといえます。では、何の「質」が高いかといいますと、「品質」だけではなく、商品・サービス自体のクオリティーが高いということです。具体的には、モノであれば、本来の使用用途だけではなく、使用環境や保管、廃棄に関わることまで考慮されたモノなどは非常に質が高いといえるでしょう。「質」が低い商品というのは、本来の機能さえ果たしていないモノです。例えば、簡単な小型カメラと大容量ハードディスクを組み合わせた監視カメラ。監視カメラである以上、異常時のトリガー入力や、異常前画像の再生機能などは当然のように備えていなければなりません。ところが、こういった機能がついていないのに「監視カメラ」として市販しようとしているのです。もともと、狙いは最近流行のビジネスマッチングによる企業連携とのことですので、確かに、カメラ技術とデータ記録技術を持った企業がマッチングして作ったということには意義がありそうですが、市販するというレベルの製品にはなっていないのが現状です。
また、その問題が議論されないのももっと問題ですが・・・。
このように、モノやサービス自身の「質」が標準レベルまでに至っていなければ、市販しても売れないのは当然です。前述の優良企業は上場している企業が多いですが、上場していることによる人的や資金的な企業力で「質」を提供しているだけではありません。しっかりと世の中の動きを観察し、顧客の要望を取り入れる製品を忠実に作っているのです。従って、中小企業で人がいないから「質」の高いモノ・サービスが提供できないというのは単なる言い訳に過ぎないといえます。 要は、「質」に着眼していないこと(気づいていないこと)が問題なのです。
「質」の高いモノ・サービスを提供すれば、必ず、現状より利益率は上がります。売価を上げるまでは行かなくても、下げることを防ぐことは可能です。顧客の要望がより一層多様化している中で、「質」の高いモノ・サービスを提供すること。「利益率の改善」は「質」の改善から。もっと議論したり語られたりするようになってほしいものです。
コラム03
「まずやってみよう。というやり方」は最適か?

「とりえあず、やってみよう。やってみなければわからないから。」 経営者の方からよく耳にする言葉です。何事もやってみて、そこから得られる情報を元に修正していく。ある意味では的確な手法だと思いますが、問題は、どこまで事前に「仮説が立てられているか」ということが重要です。あまり語られることは多くないですが、「とりあえず、やってみよう。やってみなければわからない。」という手法では、その裏に、「もう調べたり考えたりしてもこれ以上は新たな発見は無いから」という前提が必要なのではないでしょうか。
新規事業や新商品などは、確かに実際に売ってみないとわからないことばかりです。しかしながら、事前に良く調べたり仮説を立てたりすることで、実際に行ってみた場合にどこがどう違っていたのかという乖離点をしっかりと掴むことができます。逆に、そのような過程を踏んでいないと、うまくいかない場合は、どこがどう違っていたのかがわからないでしょうし、うまくいった場合は、成功した要因が良くわからないまま成功したという事実だけに酔ってしまっているケースが散見されます。
私はセミナー等で「水たまり調査」というショートコラムをよく話します。これは、「目の前の水たまりを調査してください」という課題を設定したときの、経営者の方の動きを説明した話です。1番目のパターンは、「まずやってみよう。やってみなければわからないから」という考えの下に、すぐにジャブジャブ入っていくタイプの経営者。入ってみた答えが、「深さは○○センチで、広さは△△センチぐらいだった。」という答え。その答えを得たことで満足してしまう方のパターン。2番目のパターンは、「深さは、水たまりは一般的には○○センチぐらいの深さだからそう違わないだろう。 周囲の道路の陥没も特に大きいものは無いみたいだから、恐らく○○センチと推定される。広さは、横にある物体の大きさから△△センチぐらいかな。深さと広さは大体推定できるから、入ってみて温度や凹凸を調べてみよう」という仮説をたてて、推定できる内容から調査内容をそれ以外に絞って調べてみるパターン。
いかがでしょうか。一目瞭然で、その調査の厚みの差を感じ取っていただけますでしょうか。ここでよく出る話が、そんなこと考えている間に他社に負けてしまうという意見。確かに、 ビジネスにスピードは非常に重要です。しかし、この程度のことを考える時間で他社に負けてしまう、いいかえれば、こんなことも考えずにスピードだけで参入してしまうと、必ずといっていいくらい競合につぶされてしまうでしょう。
昨今の顧客ニーズの多様化時代において、そんなに簡単に成功するビジネスはありません。戦略をしっかり練って、仮説を練って、競合に対しての差別化をしっかりとおこなってから参入する。繰り返しているうちに、ビジネスの勘というものが磨かれていくのではないでしょうか。
「まず、やってみよう。やってみなければわからないから」 よく耳にする手法ですが、「もう調べることは調べつくした」という前提を忘れていませんでしょうか???
コラム02
有形資産は売上を作り、無形資産は利益を稼ぐ

「無形資産って何?」 無形資産というものは定義自体が難しい。会計学的に言えば、「商標権」「特許権」などの知的財産権を真っ先にイメージするが、企業競争力・収益力という観点でみれば、少し違う風景となる。簡単なもので言えば、製造技術を始めとした各種の技術ノウハウなどがそうである。あるいは、顧客ニーズを収集する仕組みなども無形資産として考えることができる。もっと進んでいけば、「知」を管理するナレッジマネジメントシステムの保有が無形資産ということになるだろう。書き上げていけば枚挙に暇がないほどあるのも無形資産である。
では、企業活動において無形資産はどのような役割を果たしているのだろうか。㈱キーエンスのような超高収益企業を例に考えてみる。経済雑誌等で数多く取り上げられているのでご存知の方も多いと思うが、㈱キーエンスという会社はファブレス経営や業績連動型賃金制度、名称こそ異なるがバランススコアカードに近い戦略策定手法など、最新の経営手法???(巷ではそのように取り上げられているようであるが㈱キーエンスがそうであるように昔から導入している企業もある)を10年、20年前という随分前から取り入れている。これらはもれなく無形資産≒ノウハウである。2006年3月期決算をみてみると、売上高1583億、経常利益844億、売上高経常利益率53%という驚異的な利益率を誇る。注目すべきは総資本経常利益率23%。ROAといわれるこの指標は文字通り使用総資本に占める経常利益の割合である。この数値が高いということは、元手(総資本)に対する利益(リターン)が非常に高いということであり、非常に効率がいい経営をしている証拠である。実際のところ同規模のメーカーと比較しても段違いに高い数値を示しており、単純に会計学的なROAを比較していてはこの数値の説明がつかない。つまり、無形資産の存在なしにこの数値を語ることはできないのである。納得のいく説明をつけるとすると、昔から作り上げてきた無形資産≒ノウハウがこの超高収益指標を産み出していると考え方が最も自然である。例えば、前述のファブレス。「工場を持たない」という意味であるが、工場は有形資産であるが、外注工場を運営する仕組み・テクニックは無形資産である。次に業績連動型賃金制度、無形資産である「人」のモチベーション向上のためのインセンティブ制度であり、この制度自体も無形資産である。つまり、昔からこのような多種多様な経営手法を取り入れているから毎年驚くような高収益を出しているのである。そして、その源泉は無形資産なのである。
中国が世界の工場として市民権を得た現状においては、国内のメーカーが独自性があり付加価値のある商品・サービスを提供することは非常に困難なことである。どこに余地があるのか。それは工場自体ではなく、設備自体ではなく、無形資産であるそれらを運営するノウハウや商品・サービスの企画力である。前述の㈱キーエンスはこの部分が非常に長けているのである。
バーニーというアメリカの学者がRBV戦略理論という理論を唱えている。これは競争優位の源泉を組織が保有している経営資源に委ねている理論である。一見、有形資産のことを言っているように思えるが、実はその理論の中で、無形資産の重要性を説いている。V:価値、R:稀少性、I:模倣困難性、O:組織力。これらの4つの要素が競争優位≒超過収益力を作る要因であると述べている。良く見ると、4つとも無形資産を指している。企業戦略やマーケティングにおいて理論・学説は必ずしも当てはまらないものが多いが、この学説だけは、㈱キーエンスをはじめとする超高収益企業群を観察してみると妙な納得感がある。
高収益を産み出すための秘訣。それは無形資産の構築とその活用に他ならない。有形資産は売上を作るもの。無形資産は利益を稼ぐもの。当てっこゲームではないが間違いなく当っているはずである。
コラム01
上手なコンサルタントの探し方・使い方

「目利き」。この一言に尽きるといえます。コンサルタントと名のつく人は世の中に五万といます。その中で自社にあったコンサルタントを探すこと。これは探す人自身の「目利き」能力にかかっているといえるのではないでしょうか。ではどういう点に着目すればいいのでしょうか。ポイントは2つ考えられます。1つは、「求めるコンサルタントのレベル」が重要です。当たり前の話ですが、高卒の学力の方が大学の予備校の講師はできないでしょう。100の知識・経験を有しているから50の指導ができるというもので、50の知識・経験しかない人が80の指導を見真似・着真似でしたとしても、中身はペラペラで薄いものとなってしまうでしょう。つまり、コンサルタントを探す人が、「どのレベルを求めるか」により、指導する側のレベルが決まるのです。理想論ですが・・・。現実には、逆転現象は茶飯事でしょうが、そこに気付いていない依頼する側の人も多いと思います。
2つ目のポイントは、「求める方向性と提供してくれる方向性を一致させること」だと考えます。よくある話ですが、「オンリーワン企業になりたい、独自性を出したいので、東京や大阪の大手有名コンサルタント会社に頼みました」という話があります。実際、どうなのでしょうか? 大手有名コンサルタント会社のようなマニュアル化された手法では、同じ業種の会社には同じ方向性の指導をする傾向が多いのではないでしょうか。わかりやすい例が、「トンカツレストラン」だと思います。名前こそ異なりますが、全国どこにいっても、すり鉢でゴマをすってそこにソースを注ぎ、キャベツ・ライスはお変わり自由。メニューはほとんど同じ・・・ etc 。これが、大手有名コンサルタント会社による指導の現実だと思います。このような手法で、「オンリーワン企業」や「独自性のある商品・サービス作り」は到底不可能と考えるのが自然でしょう。ただ、一言、大手有名コンサルタント会社の名誉のために付け加えますが、もし、そこの会社の創業者かトップコンサルタントが就いてくれるのであれば、話は違った方向になると思いますが・・・。
要は、「自社をどのような方向に持って生きたいか。そのためにはどのような方向性を提供してくれるのか」を一致させることが重要だと考えます。
「目利き」をしっかりと行っていただき、自社にとって必要なコンサルタントを十分活用されることを期待します。


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